
買う理由は、年齢とともに磨かれる
十代の頃、心斎橋OPAでトレンドを追いかけ、未来を少し先取りする服を見つける行為に全力を注いだ。閉館のポスターを見たとき、あの頃の自分と今の自分が静かに向き合う感覚が生まれた。若さは「モノで世界を知る時期」であり、今は「学びそのものに価値を置く時期」。無形資産を積み上げることに心が向くようになったのは、青春期の熱量があったからこそだと感じる。
哲学という道具箱 服のセレクトと三つの推論法
日々の選択に活かしているのが、哲学の三つの推論だ。
演繹―確かな前提から必然的結論を導く。例えば「質の良い素材は長持ちする」という前提があれば、投資すべき服が見えてくる。
帰納―複数の経験から一般化へ進む。手元に長く残った服の共通項を観察すれば、自分の本当の好みが浮かぶ。
アブダクション―最も納得できる仮説を立てる思考。「コーディネートが冴えない→色数が多すぎるのか」と仮説を置き、検証する。
日常にこの三手を循環させると、選択の精度が上がる。
十代の熱から、静かな選択へ
十代の買い物は瞬発力と観察力を鍛えてくれた。今は購入前に短い停泊時間を置く。色で迷うなら、合わせたい服と数回向き合う。
演繹・帰納・アブダクションのサイクルは、感性と理性の均衡点を探る行為そのもの。結果、余計な買い物は減り、クローゼットには「帰る場所」のある服だけが残る。無形資産とは知識、時間、精神的余裕。読書や学習、静かな対話が未来を耕す。
服は未来像のプロトタイプ
服は単なる布ではない。過去の経験と未来の自画像を接続するツールだ。素材・設計・持続性を軸に選ぶことで、流行に振り回されることなく、自分の軸が研ぎ澄まされる。
「この一着は次の季節の中心になる」
そんな仮説を試し続けることで、生活と思考はより軽く、深くなる。
愛用品の小さな守護者たち
- DGAZ HERMESバーキンインナーバッグ 全サイズあり
バッグという日常の相棒は、気づかぬうちに内側からすり減る。このインナーバッグは、型を守り、内装を静かに護る存在である。豪奢さより、佇まいの美しさを長く保ちたい人に向く。 - 自動巻き時計 ワインディングマシーン(2本巻き)
自動巻き時計に必要なのは、時間を刻む自由を絶やさない環境である。この装置は、ゼンマイの鼓動をゆっくりと保ち、精度と寿命を支える。時間を積み重ねる道具を、時間そのもので守るという美しい選択。
街が変わっても、選ぶという行為の美学は変わらない。過去の熱は、今の静かな確信へと変容する。
モノは減っていく。しかし、愛用品との関係は深まっていくから。



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